松風 第三二回
島に図書館をつくる Library in residence
Our Project Series 1
北野健治
私には、計画しているいくつかのプロジェクトがある。今は、夢想ともいえる「計画」の段階だ。
唐突だが、私は言葉の力を信じている。言葉にした瞬間から、その言葉はリアルな力を持つ。
そこでだ。それらの「計画」を私の中のイメージだけで終わらせるのは、もうやめた。言葉に表して、そのプロジェクトに賛同する仲間を募りたい。
力を持った言葉は、時間と空間を巡る。仲間たちがきっと(それは、直ぐかもしれないし、サグラダファミリアのように世紀を超えるかもしれない)、かたちにするだろう。
その意味で、“Our”Projectシリーズとして言葉にしていく。
まず、その第一候補として「島に図書館をつくる」がある。
ここでのエッセイで何度も触れたように、私は瀬戸内海に浮かぶ山口県の屋代島で育った。島の地形的な特徴として、平地はあまりない。海辺から島の中央部にそびえる山々に向かっての斜面で、ほぼ島の地形は構成されている。そのため、農地としては水田に適さず、温州みかんの段々畑が島全体に拡がる。
私が島で育った昭和四〇年代は、まだ家族団らんの光景が普通に見られた。冬には、畳敷きの居間にこたつを出す。その上に置かれた籠には、冬の風物詩の「みかん」やりんごの山が盛られていた。
それが、今では団らんも、ましてやこたつがある家庭は、ほとんど見られなくなった。みかんも他の果物が年中をとおして入手できるようになるにつれ、冬の風物詩の位置が薄らいでいく。何よりも消費量が減った。だからか単価の高い特殊な品種が開発され、温州みかんの出番は減る。
さらに、農業一般にも言えることだが、島でのみかん栽培の後継者は衰退の一途を辿る。温州みかんの生産量の減少に合わせて、荒廃農地も増えていく。
みかんが栽培される段々畑は、その生育のために日当たりの良い場所が選ばれる。そこはまた、島の地形的にも、海が見える場所が多い。
その段々畑に「図書館」をつくる。
一般的な図書館のイメージは、静かにひとり黙々と文字を目で追う人たちが集う場所。だが、私を育ててくれた島の図書館は違う。
他人に迷惑をかけないのは最低限のルールとして、そこは本を媒介としたサロン。性別や世代、社会の属性を超えて、「本」という媒体を中心に雑談ができる「場」だった。
そんな「図書館」を段々畑の中につくりたい。イメージは、こうだ。
建物は、山の斜面を利用した構造。ところどころに机を置いたスペースを配しながら、基本的には斜面に沿った階段で、全体が緩やかにつながっていく。と同時にスロープも。
本棚は開架式。利用者は、ぶらぶら目的もなく館内を巡っていい。もし、興味を引いた本があれば手に取り、そこや近くの階段、机の場所や好きな場所で本が読める。大きな声でなければ、利用者同士が話しかけるのも自由。
蔵書は基本的に寄贈本。その本には、寄贈者の名前と収蔵日が記載されている。利用者が本を手に取るときに、その贈り手と読み手がつながる瞬間。もし、寄贈者がいやでなければ、個人情報に抵触しない内容の寄贈者のデータを作成してもいい。
もうひとつの特長は、館内に宿泊スペースがあること。但し、レストランは設けない。自炊スペースは設けるが、でなければ島の店を利用して、島との関係を深めてもらう。
でも、サロンとしてのカフェバーは設けたい。酒を飲みながら、本だけでなく、さまざまな話ができる場所。オープンスペースとして、焚火やバーベキューのできるスペースがあってもいいかも、なら、テントの張れる場所も。
運営は、会員の年会費をベースに。いずれは、会員たちから事業のアイデアを募り、みんなで検討しながらかたちにする。それらの収支を計上して運営する方向で。あくまでも、利用者中心の、関係者以外の制約を受けない、独立採算制の自由な運営を行う。
と、現在考えているイメージは、こんなところ。構想は、賛同してくれる仲間たちとの話し合いの中で変わっていけばいい。
ぜひ、みんなの意見を聞いてみたい。
2026年5月4日
(つづく)
