松風 34

松風 第三四回 

 二本松にスナック本屋を作る

Our Project Series 3

               北野健治

 プロジェクト案は続く。

三つ目は、街にブック・カフェならぬブック・スナックを作ること。

 かつてはよく見られた街場の、いわゆる商店街にある本屋は、いまや絶滅危惧種だ。レッドデータでも、かなり高いレベルにあると思う。

アマゾンをはじめ、ネット書店では在庫がある限り迅速に自宅まで届けてくれる。ところがだ。街場の本屋では、そうはいかない。店頭にない場合には、版元または取次店に連絡して、本屋に届くのは早くても一週間はかかるだろう。ましてや、急ぎの場合には追加料金が取られる始末。

 これでは、リアル書店とネット書店の勝負は、火を見るよりも明らかだ。本の注文における一義的なサービスのスピードと配達の点で、勝負を挑むことはナンセンスなのだ。街場の本屋とネット書店の差異とポイントは、「リアル」であるということ。

 ここで図書館のことを思い浮かべてほしい。それは、開架式と閉架式の違いという点で。

 開架式の場合、お目当ての本を探すとき、対象とする本のまわりの本まで自然と目に入る。閉架式の場合だと、お目当ての本しか手元に届かない。この違いが、リアル本屋とネット書店にも当てはまらないか。

「本を買う」という行為は、単純に対象とする本だけを指していないのではないか。それに関連する、さらには予想だにしなかった情報まで手に入れられる可能性を秘めている。それは、世界の認識や視点について想定外のものを得られるチャンスがあるということ。「本を買う」という行為には、「場」を必要とする要素があるのではないのか。

そこに、僕は「ひと」を付け加えたい。

そうした試みには、蔦屋が本屋にカフェを併設している例がある。僕も、その場に訪れたことがある。が。旧態依然とした静かな「図書館」のイメージがぬぐえなかった。なぜなら、隣に座ったひとには、アプローチのしようがないのが現実だから。

もし、唐突に話しかけようものなら、お店のスタッフを通してクレームが寄せられるだろう。そもそもそこでは、「寛ぎ」を求めているのであって、「コミュケーション」を望んでいるのではないのだから。

だが、よく話題になるカフェでの読書会にみられるように、ひとは「本」を通じて「話したい」欲求はあるのだ。自分が読んだ本の認識の確認と、それとは違った他者の世界観への興味。なぜなら「本」そのものが、新たな世界観の提示に他ならないのだから。

そこで私は提案する。カフェではなく、スナックの併設を。

スナックは、日本独自の文化である。バーでもなく、高級クラブでもなく、強いて言えば居酒屋に近い。居酒屋との違いは、料理メインではなく、常にカウンター越しのホストがいることか。隣に偶然座った見知らぬお客にも、相手が望めば気楽に会話できる空間。

テーブル・チャージは、基本的は併設する本屋での何かしらの紙媒体の購入。欲しいものがなかったらキャッシュ。カウンターで、その本を読むのも良し、読まなくても可。会話も「場」を乱すものでなければ、ホストをはじめ同行者や初めて隣に座るお客にも、相手が嫌がらなければ、してもしなくてもOKだ。

そんなスナック本屋「スナック・スーパイン」を福島県二本松市に作る。それが僕たちの「場」をつくる「本屋」の始まりだ。

2026年8月23日 

             (つづく)               

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